㍿三成開発

令和7年(2025年)熊本県 地価公示の動向

1. 概要と全体的な傾向

令和7年(2025年)1月1日時点の地価公示によると、熊本県全体の平均変動率は3.6%の上昇となり、これは前年の2.8%から上昇幅が拡大しました。熊本県の地価は平成30年から8年連続で上昇しており、継続地点245地点中、189地点で上昇、27地点で横ばい、29地点で下落を記録しました。全国平均(2.7%上昇)と比較しても、熊本県の上昇率は顕著です。

2. 用途別・市町村別の詳細な動向

2.1. 全体概況(市町村別全用途平均変動率)

大津町(20.0%)および菊陽町(14.5%)が引き続き大幅な上昇を示し、特に大津町は全国の全市町村中2位、菊陽町は同6位と、TSMC進出の影響が色濃く反映されています。

合志市は10.0%から9.0%に上昇幅は縮小したものの、依然として高い上昇率を維持しています。熊本市(3.9%)、八代市(0.4%)、荒尾市(1.2%)、菊池市(1.2%)、宇土市(1.1%)、宇城市(2.5%)、阿蘇市(0.3%)、御船町(1.7%)、嘉島町(3.0%)、益城町(3.6%)は、R6公示に引き続き上昇し、全て上昇幅が拡大しました。山鹿市は横ばいから上昇に転じました(0.0%→0.4%)。

一方、人吉市(▲1.2%)、水俣市(▲1.0%)、玉名市(▲0.4%)、天草市(▲0.7%)、長洲町(▲0.2%)、芦北町(▲0.6%)はR6公示に引き続き下落しました。

2.2. 用途別平均変動率・平均価格

区分全用途住宅地宅地見込地商業地工業地
平均変動率R62.82.51.73.16.0
R73.63.12.83.511.5
平均価格(円/m²)R6102,50057,30023,100206,80046,800
R7108,00060,10023,800217,50051,600

工業地の平均変動率が前年の6.0%から11.5%と大きく上昇し、全国平均(4.8%)を大きく上回っています。これは、TSMC進出による周辺地域の工場用地需要の高さを示唆しています。住宅地、宅地見込地、商業地も平均変動率が上昇しており、県内全体の地価上昇トレンドを牽引しています。全用途、住宅地、商業地、工業地全てで平均価格が上昇しています。

2.3. 用途別詳細

住宅地

平均変動率3.1%(R6: 2.5%)で、8年連続の上昇。上昇地点が119地点、横ばい21地点、下落18地点(昨年より下落地点が減少)。合志市、大津町、菊陽町が9.9%~12.4%と大幅に上昇。特に菊陽町の12.4%は全国の住宅地で9位にランクイン。最高価格地点は熊本市中央区新屋敷1丁目(259,000円/㎡)で、7年連続の最高価格を維持しています。

商業地

平均変動率3.5%(R6: 3.1%)で、8年連続の上昇。上昇地点が59地点、横ばい6地点、下落11地点(昨年より下落地点が減少)。大津町(24.0%)および菊陽町(30.9%)が大きく上昇。熊本市中心商業地(上通り・下通り付近)の平均変動率は4.1%と、上昇幅が拡大しました。最高価格地点は熊本市中央区下通1丁目(2,440,000円/㎡)で、32年連続の最高価格を維持しています。

工業地

平均変動率11.5%(R6: 6.0%)で、9年連続の上昇。全9地点で上昇、横ばい・下落地点なし。大津町(33.3%)は全国の工業地で1位、熊本市東区(21.0%)は同3位と、非常に高い上昇率を記録しています。

3. TSMC進出の影響を受ける周辺市町村の動向

TSMC(JASM)の工場が建設された菊陽町とその周辺の市町村は、特に地価上昇が顕著です。

  • 大津町:全用途平均変動率20.0%、工業地33.3%(全国1位)
  • 菊陽町:全用途平均変動率14.5%、商業地30.9%(全国3位)、住宅地12.4%(全国9位)
  • 熊本市東区:全用途平均変動率4.4%、工業地21.0%(全国3位)
  • 合志市:全用途平均変動率9.0%、住宅地9.9%

4. 全国との比較

熊本県全体の平均変動率は全用途で3.6%上昇と、全国平均2.7%を上回っています。特に工業地の変動率は11.5%と、全国平均4.8%、三大都市圏平均6.5%、地方圏平均3.2%を大幅に凌駕しており、熊本県における工業地需要の特異な高まりを示しています。

5. 地価公示制度の概要

地価公示は、国土交通省土地鑑定委員会が、地価公示法に基づき、毎年1月1日時点の1㎡あたりの正常な価格を判定し公示するものです。2人以上の不動産鑑定士の鑑定評価に基づき、審査・調整を経て価格が判定されます。熊本県では13市7町を対象に、247地点(R6: 251地点)の標準地が設定されています。

結論

令和7年の熊本県地価公示は、全体として継続的な上昇を示し、特にTSMC進出の影響を受ける大津町、菊陽町、合志市、熊本市東区において顕著な地価上昇が確認されました。中でも工業地の地価上昇は全国的に見ても極めて高く、半導体関連産業の集積が地域経済に与える影響の大きさを明確に示しています。熊本市中心部の商業地も回復基調を強めており、地域全体の活性化が地価上昇を後押ししていると考えられます。一方で、一部の市町村では引き続き地価下落が見られ、県内での地域差が存在します。

PAGE TOP